ジュリアナブラザーズの対極に存在するデスク2が、初のアルバム「 , ○ (Dot サークル)」を完成させた。
メジャー傘下ではないUKのレーベル、[PONぽこPON RECORDINGS]から唐突にリリースが発表された経緯も手伝い、
目下世界中で大きな話題となっている。
ジュリアナブラザーズのサウンドにも大きく貢献してきたキャンドルアーティスト J氏をプロデューサーとして起用、
タイトル曲「 Mars, (analog type) 」
ファースト・シングル「2chairs」など全9曲を収録した約40分の内容で、サウンドの骨格はコンピュータで作られている。
そのエレクトロニックな音響世界は、レディオヘッドの『キッド A』(2000年)や『アムニージアック』(2001年)と
表面上は連なるものだ。
電子ビートに絡むギター、ベース、キーボードの音も、繊細なトーンで刻まれる電子音自体も、
彼等が自己表現をするために生み出した、パーソナルなテイストを持つものばかり。
アルバムを通してメランコリックでペシミスティックなムードが全体を構成しているが、決して沈鬱なものにはなっていない。
彼等が“ヒューマン”と形容する、等身大のエモーションを堪能できる作品だ。
現在は「JULIANA SHOWER 11 (イレブン)」のライブに向けて肉体改造中というY氏とU氏に「 , ○ (Dot サークル)」について話を聞いた。
Q デビューアルバム「 , ○ (Dot サークル)」 を記念する今回のライブ、
これまでにない大規模な舞台装置を使った、すごいステージを見せてくれるということですが。
Y氏 ひと言でいうなら、〝ショー"というものを今まで以上に突き詰めたステージになると思いますね。
Q 突き詰めた……、ということは、華麗且つパワフルなステージを期待できそうですが、長時間のステージを
乗り切るために、体力面や精神面などで気を付けていることなどありますか?
U氏 体調面は常に気を遣っていますね。それは、これまでもそうですが、
観客のみなさんに、いいステージを見せたいと、ずっと思っているから。
Q それぞれのソロワークの期間を経ての、アルバムの発表となりますが。
創作、制作はいつごろからスタートしたのでしょうか。
U氏 制作自体は、2001年に何曲か形にするところからスタートさせました。で、ソロワークのために中断して、
2008年の11月に再開してから去年の12月まで作業していたので…ロングランという事になりますね。
Q それだけ時間をかけた理由は?
Y氏 やっぱり世界がパノプティコン化へと着実に突き進んでいることは疑いえませんよね。
記録メディアや時空を超えたSNS、クラウド技術は一見、ノンリニア、離散的時間を提供しているように見えますが、
それは直線的時間観から眺めた錯覚にすぎません。
あらゆる新技術というモノは経済効果を望む外野の大声で利点のみ喧伝され急拡張、既成事実化し、導入に際し、
喪失しうる側面をめぐっての吟味検証の間を与えませんので。
Q 8曲目『舟唄』のイントロとアウトロのギターフレーズが、すごく独特で印象的で。聴いた瞬間に泣きそうになりました。
Y氏 これは、曲もだいぶ前に書いてあったんです。で、いまおっしゃったイントロやアウトロのギターフレーズは、
DEMOを創っている段階でスッと出てきたものなんですよ。
Q アルバムの中で、とくに気に入っている曲、その箇所、理由を教えてください。
U氏 やはり順番はつけられないので、特に気に入っているという理由ではありませんが、
やっぱり「舟唄」のイントロを初めて聴いた時の感動は、今でもはっきりと憶えています。
イントロを聴いただだけで、大ヒット間違いなしと確信しました。
Q アルバムのラストは『ultra soul 2012』ですけれど、
実質上はその前に置かれているこの『舟唄』で締めくくられているような…。
U氏 ああ、確かに。『ultra soul 2012』はちょっとボーナストラック的ですよね。
Q 子供の頃には、どんな曲を聴いたり、歌ったりしていましたか?
Y氏 浪曲、民謡ですね。ラジオしかなかったですし、(笑)。
あっ あとは、ポータブルの蓄音機で、村田英雄さんの歌を聴いていました。
Q 最近よく聴く歌手や曲を教えてください。
U氏 僕は、今でもレコードなんですよ。もちろん、古いものばっかりなんですけど、何千枚もありますよ。
同じレコードを何回も何回も聴きますね。
とくに、今でもよく聴くのは、ビートルズやポール・アンカ、それと、カントリー&ウェスタンをよく聴きます。
ポール・モーリアみたいなインストゥルメンタルも好きですね。
ストリングスの動きとか、アレンジを聴きながら楽しんでいます。
それと、中国の古い音楽とか、フォルクローレとか、そういう民族音楽も全般的に好きですね。
外国行くと、そういうのばっかり探して買ってきます。
Q それでは最後にニューアルバム「 , ○ (Dot サークル)」でリスナーに一番伝えたいことは?
Y氏 電子空間内に膨大に撒き散らかされる過去らしき情報、動画や音声、アクセスログは、人々を健忘症へと誘います。
人の記憶に残すことと、記録としてPC上にセーヴすることが混合され、最新のテクノロジーは
人間の内的時間を巧みに放逐しようと振舞っているように見えます。
共有-協調が望ましさであると共有知を標榜する一方、フリーサービスにはメール文章から
キーワード抽出した連動バナー広告が次々に表示され、
過剰なパーソナライズが逆に私達から自由を奪って ゆく。
かつて語られた電子空間内のユートピア像は虚構で、情報爆発の末の無意味化、
商用-PRの場に成り果てた感は拭えません。
データマイニングがどれほど精緻化してもまた新たな問題が生じるのは自明であります。
経済律に回収される前の十数年前の電子空間、リナックス開発、改良 途上動向がボトムアップな創造の場として
目撃できたあのスリルは、最初で最後の稀有な事例だったのでしょうか....。
むしろ狂わせること。携帯電話や通信機器依存の生活より、境界や閉鎖性、
孤独こそ内的時間保持や個の防衛となりうる。
この世界環境の文化に対する弊害について長年切に感じていたことを伝えたいですね。
U氏 人々は周囲への同調目的でそれらを共有し互いの共通項を確認して安堵する。
会話を成立させる為の話題として暗黙のうちにTVドラマや歌謡曲などの娯楽情報取得が要請される。
何も通じ合っていないのに、なぜそんなに人とあわせようとするのでしょうか。これは大衆娯楽に限ったことではなく、
拘りのセンスや狭い趣味の世界でも同様。そんなに皆と一緒で何が嬉しいのでしょうか、あるいは孤独が怖いのか.....。
近代以降、芸術の存立条件が自律した個による社会であるとすれば、
日本にアーティストなんて存在し得るのでしょうか?
そもそも日本における「私」とは何なのか?。24時間コンビニと満員電車通勤が両立する不可思議さに加え、
(欧米の福祉活動と趣が違い)日本には自分探しの手段としてボランティア活動をする人が一定数いる。
自分が寂しいから承認を求め、居場所が確保できそうな、自分より、より弱い人々の場へ向かう。
しかしそれは自己肯定の対象として弱者を利用していることにはならないのか。
人も生物であるからには、自己保存本能から、他者を傷つけない範囲で利己的行動は許容され、
法に抵触しない限り、いかなる自由も担保されていると言う事を伝えたいですね。
Q ありがとうございました。「JULIANA SHOWER 11 (イレブン)」で又お会いできる事を楽しみにしています。
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